• 「うちの子、スタートの一歩目が遅い気がする…」「50m走のタイムはそこそこなのに、出だしで置いていかれる」
  • こうした悩みを持つ保護者の方によくお会いします。実はスタートダッシュの速さは、走るスピードそのものというより「一瞬でどれだけ大きな力を地面に伝えられるか」という、また別の能力によって決まります。
  • この記事では、スタートダッシュに必要な身体能力を整理したうえで、それを自宅でも効率よく鍛えられる「ジャンプトレーニング」を紹介します。

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スタートダッシュに必要な能力とは

1.瞬発力とは?

スタートダッシュの一歩目は、静止した状態からコンマ数秒の間に最大の力を発揮する動作です。
これを支えるのがいわゆる「瞬発力」、専門的には「筋パワー(筋力×スピード)」と呼ばれる能力です。

単に筋力が強いだけでは不十分で、「その筋力をどれだけ速く発揮できるか」が重要になります。
同じ力を出せる選手でも、それを0.2秒で出せる選手と0.1秒で瞬間的・爆発的に出せる選手とでは、
スタートの速さがまったく違います。

2.スタートダッシュのための動作は?

スタートダッシュに関与する関節・筋肉を以下紹介します。

  • 股関節伸展筋群(大殿筋・ハムストリング):地面を後方に押し出す、スタートの推進力の中心。お尻から太ももの裏にかけての筋肉です。
  • 膝関節伸展筋(大腿四頭筋):接地時に膝が潰れないよう支え、伸展して押し出します。太ももの前の筋肉です。
  • 足関節伸展筋(下腿三頭筋):いわゆるふくらはぎ、ヒラメ筋です。足首を使った最後の押し出し、地面反力の伝達に寄与します。
  • 体幹(腹筋群・脊柱起立筋):前傾姿勢を保ち、下半身で生み出した力を上半身にロスなく伝えます。

スタートダッシュとは、これらの筋肉が股関節→膝関節→足関節の順番で連動して伸展する「トリプルエクステンション」という動作を、いかに速く・強く行えるかという競技だと言えます。

なぜジャンプ系トレーニングが有効なのか?

このトリプルエクステンションを速く強く行う能力を鍛える方法として最も効果的なのが、「プライオメトリクス(ジャンプ系トレーニング)」です。

筋肉は「伸ばされた直後」に縮む動作を行うと、ゴムを伸ばして離すように、より大きな力を瞬間的に発揮できます。
これを専門的な用語で、伸張短縮サイクル(SSC:Stretch-Shortening Cycle)と呼びます。
ジャンプ動作、特に着地から次の跳躍へすぐに切り替える動きは、このSSCを繰り返し使うため、スタートダッシュに直結する「地面を速く強く押す能力」を効率的に鍛えることができます。

プレゴールデンエイジの世代からSSC強化のトレーニングを行っている子は少ないので、ライバルとも差別化できるでしょう。
それでは、自宅でできる具体的なトレーニングメニューを紹介します。

スタートダッシュを強化するためのトレーニングメニュー5選

1.スプリットステップジャンプ

  1. ステップ台を体の前方に置きます。
  2. 前足をステップ台の上に、後ろ足を地面に置き、
    前後に開いた基本姿勢(スプリットスタンス)で構えます。
  3. その場でジャンプし、空中で前後の足を入れ替えます。
    台に乗っていた足を地面へ、地面にあった足を台の上へ、着地と同時に踏み替えます。
  4. これをリズミカルに連続して繰り返します。
    目安としては最初は10回から、慣れてきたら1セット20回くらいがいいでしょう。

上体をまっすぐに保ち、前傾しすぎないようにしましょう。
着地の瞬間は両ひざを適度に柔らかく使い、衝撃を吸収します。
台の高さはやや低めから始め、慣れてきたら上げていきましょう。
(参考までにうちの子は4歳で最初はじめた時は10cmからです。5歳では既に20cmくらいでやってました。)

前後方向の切り返し、地面を後方へ強く蹴り出すスタートダッシュの一歩目に直結する片脚ずつの爆発的パワー、着地位置のコントロール能力等が鍛えられます。

ステップ台はトレーニング用のモノでなくても適度な高さのある台であれば構いませんが、
ジャンプを繰り返していても安定しているものを選びましょう。
トレーニング用のものを用意できれば安定はしやすく、子供に合わせた高さ調整がしやすいです。
(下記の製品は比較的コスパもよく、何より高さ調整がピッタリ5cm刻みなのが嬉しいです。20cm・3段あれば十分です。)

2.ステップタッチジャンプ

  1. ステップ台を縦向きに1台置きます。
  2. 子どもは右足をステップ台の上に、左足を地面に置いた状態で構えます。
  3. 反復横跳びの要領で横方向にジャンプし、着地時には左足をステップ台の上に、右足を地面に乗せ替えます。
  4. これをリズミカルに左右繰り返します。目安としては最初は10回から、慣れてきたら1セット20回くらいがいいでしょう。
  5. 可能であれば大人はステップ台の高さに手を構え、子どもが跳ぶたびに下方向にハイタッチするように手にタッチさせます。
  6. バリエーションとして、ステップ台を2台用意し、両サイドにおいてジャンプするのもいいでしょう。
    外側の足が伸びた状態なのと、内側の足が伸びた状態なのでは、それぞれ鍛えられるポイントが変わってきます。競技に活かすためにはバリエーションを挙げておくことが大事です。

タッチを目標物にすることで、子どもは自然と「跳ぶ高さ・タイミング」を意識できます。
着地してる時間を短く、素早くジャンプできると、地面反力を無駄なく吸収・発揮する感覚が養われます。

トリプルエクステンションとあわせて、
リズム感・アジリティが鍛えられます。
また、横方向への切り替えし力や、走るのに必要な片脚荷重での安定性も高まります。
余談ですがウチの子どもはポケモンのゲッコウガみたいだと、なんか気に入ってました笑

3.プライオボックスジャンプ

  1. プライオボックス(または安定した台)の前に立ちます。
  2. 軽く膝を曲げて反動をつけ、腕を大きく振り上げながら両足で真上・斜め前方に跳び、ボックスの上に両足同時に着地します。
  3. ボックスの上でしっかり静止してから、台を降りて次の回に移ります。
    (連続で飛び降りて跳ぶと膝への負担が大きくなるため、1回ずつ降りて行うのが基本です。)
    ※筋力・筋パワー系のトレーニングは20回、30回と回数を重ねるのは逆効果です。
     成功率の高いギリギリの高さを、5回、どんなに多くても10回程度行うのがいいでしょう。
  4. 乗れなかったとき、ボックスが倒れた時に危ないので、必ずパパママがボックスに手を添えて支えるようにしてください!!!

ポイントとしては、反動(腕振り・軽い沈み込み)を使い、動作を大きくすることで、
股関節・膝関節・足関節を同時に一気に伸ばす「トリプルエクステンション」を意識するようにしましょう。
着地の時は両足同時、かつ膝を使って衝撃を吸収するようにします。
最初は低めの高さから始め、フォーム+成功率が安定してきたら少しずつ高さを挙げていきましょう。

股関節・膝関節・足関節のトリプルエクステンションに直結するメニューです。

目安としてですがうちの子はそこそこジャンプ力があったので、
4歳から初めて最初は40cm、5歳半で60cm、6歳の終わりに75cmくらいでした。

こちらも台であれば何でもできるのですが、
固すぎると衝撃が強くて負担なので、できれば専用のモノを用意したほうがいいと思います。
ただそこそこお値段が張るので、最初は30×40×50くらいの比較的安価なものを買っておいて、
高さが伸びてきたら前述のステップ台を下に引いて高さ調節をするのがコスパ良いと思います。

4.シーテッド・プライオボックスジャンプ

  1. ステップ台(低めの台)に浅く腰掛けます。
  2. 反動をつけずに、座った状態から一気に立ち上がると同時に、前方または上方のプライオボックスへジャンプします。
  3. 両足で着地し、静止します。

座った状態と異なり、腕を振る以外の反動が使えなくなります。
それにより静止状態から最大出力を発揮するため、まさにスタートダッシュの1歩目と近い状況を再現しています。
通常のプライオボックスをやる高さの10cm低いくらいの高さで、一日5回ほど跳べば十分です。

5.プライオボックスデプスジャンプ

  1. ステップ台(低めの台)の上に立ちます。
  2. 台から地面へ片足ずつゆっくり降ります(飛び降りるというより、片脚ずつ階段を下りる感覚)。
  3. 両足が地面に着地した瞬間、できるだけ接地時間を短くして、すぐに上方のボックスの上へ跳び上がります。
  4. 両足で着地し、静止します。

5種目の中で最も強度が高いトレーニングです。
着地の衝撃を利用して、いかに素早く切り返してジャンプできるかがポイントで、これがSSC(伸張短縮サイクル)を最も強く刺激する動きになります。
「着地の音が小さく、接地時間が短いほど良い」と伝えると、子どもにもわかりやすい目安になります。
こちらも通常のプライオボックスをやる高さの10cm低いくらいの高さで、一日5回ほど跳べば十分です。

トレーニングを行う上での注意点

  • 順番を守る:ステップタッチジャンプで着地の安定性を身につけてから、プライオボックスジャンプで垂直方向のパワーを鍛え、最後に負荷の高いボックスジャンプのバリエーション種目に進む、という段階を踏むことをおすすめします。
  • フォーム優先:回数をこなすことより、両足同時着地・膝が内側に入らない・体幹がぶれない、といったフォームを優先してください。
  • 休息を挟む:プライオメトリクス系のトレーニングは神経系への負荷が大きいため、毎日行うのではなく週2〜3回程度、間に休息日を挟むのが効果的です。
  • 体調・成長段階に配慮する:成長期は骨や関節がまだ発達途中です。痛みを訴える場合はすぐに中止し、無理に高さや回数を追わないようにしましょう。

まとめ

  • スタートダッシュの速さは、生まれ持った才能だけで決まるものではありません。瞬発力・筋パワーという能力は、正しいトレーニングによって着実に伸ばすことができます。
  • 今回紹介したジャンプトレーニングは、敏捷性と着地の安定性、垂直パワー、「静止状態からの爆発力」というスタートダッシュそのものの能力、反応筋力という、それぞれ異なる要素を複合的かつ段階的に鍛えられる構成になっています。
  • 自宅にステップ台やプライオボックスがあれば、週2〜3回、10〜15分程度で取り組める内容です。ぜひ親子で取り組んでみてください。