• スクワット10回、腕立て伏せ10回、腹筋10回。チームや部活の練習でも、家での自主トレでも、トレーニングの回数はなぜか「10回」になっていることがとても多いです。
  • では、その10回はどこから来たのでしょうか?なんとなく10回やってないですか?
  • 反復回数は、実はトレーニングの目的によって変えるべきものです。そして子どもの場合は、大人とは「回数を決める基準」そのものが違います。
  • この記事では、反復回数と効果の関係を整理したうえで、子どものトレーニングで本当に大切にすべきことを解説します。

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なぜ「10回」がこんなに定番なのか

ルーツは1940年代のリハビリ研究

「10回×3セット」の起源としてよく知られているのが、1940年代にアメリカの軍医トーマス・デローム(Thomas DeLorme)が考案した漸進的抵抗運動(Progressive Resistance Exercise)です。
負傷した兵士のリハビリのために、「10回できる最大の重さ」を基準にして、無理せず軽い重さから段階的に10回ずつ3セット行う方法を提案しました。

この方法が効果を上げたことで、「10回×3セット」はトレーニングの基本形として世界中に広まりました。

覚えやすく、ちょうどいい数字

もう一つの理由は、単純に切りがよく覚えやすいことです。
指導者も数えやすく、子どもにも伝わりやすい。
だからこそ、目的を考えないまま「とりあえず10回」が定着してしまった面があります。

10回が悪いわけではありません。
問題は、なぜ10回なのかを考えずに続けていることです。

反復回数で何が変わるのか

回数と効果のおおまかな関係

大人の筋力トレーニングでは、一般的に次のような目安が使われます。
ここでいう回数は「その回数で限界近くになる重さ」を選んだ場合の回数です。

※ここでいう“筋力”はゆっくりでも重いものを持ち上げることを言います。軽いものや体そのものを素早く動かす“パワー”と使い分けています。

つまり「10回」は、主に筋肉を大きくする目的の範囲に入る回数です。
しかもその10回で限界に近い(これ以上は、もう1~2回しか上がらない)状態じゃないと、筋肥大の効果すらありません。
重いものを持ち上げる力を高めたいなら回数は少なく、持久力を高めたいなら多く、というように、目的によって回数は変わります。

子どものトレーニングは「正しい動作の習得」が目的

子どもの主目的は、動作を覚えること

ここがこの記事でいちばん伝えたいポイントです。

子どものトレーニングの主目的は、筋肉を大きくすることでも、限界まで追い込むことでもありません。
動作を正しくできること、そして動作そのもの、つまり体の動かし方を覚えることがメインです。

思春期前の子どもは、トレーニングで筋力が伸びても、筋肉そのものが大きくなる効果は小さいことが分かっています。
この時期の筋力アップは、主に神経系の適応、つまり「体の動かし方が上手になること」によるものです。

だからこそ、子どもの時期に身につけるべきは、しゃがむ・押す・引く・踏み出す・持ち上げるといった基本動作の正しいパターンです。
ここが身についていれば、成長してから本格的に筋力トレーニングを始めたときに、安全に、効率よく伸びていきますし、そもそも基本動作が身に着いていることでサッカーや野球といった様々な競技の習得にも十分役立ちます。

️️️⚠️ここでいう子供とは幼児~小学校中学年くらいの子を指します。
小学校高学年~中学生以上になると、体もできあがってきて筋力/筋肥大を目的としたトレーニングを行うこともあります。
逆に言えばもちろん大人であっても、「体の動かし方を覚える」目的でトレーニングを行うこともあります。

つまり同じ種目でも、大人と子どもでは「目的」が違う

たとえば、後ろ足を台に乗せて片脚でしゃがむブルガリアンスクワット。
大人にとっては、大殿筋(お尻)、ハムストリング(もも裏)、大腿四頭筋(もも前)を効率よく鍛えられる優秀な筋力トレーニングメニューの一つです。

でも子どもにとっての目的は、片脚でバランスを取りながら、片方の股関節に体重を乗せて股関節や膝の曲げ伸ばしを習得することです。
筋肉に効かせることよりも、「片脚で立ったまま、お尻を後ろに引いて股関節で体重を受け止める」という動きを体に覚えさせることが大事なのです。

この動きは、走る・跳ぶ・踏み込む・切り返すといった、ほとんどのスポーツ動作の土台になります。
同じように、ほかの種目も子どもにとっての目的で見直してみると、次のようになります。

こう考えると、子どもにとっての「1回」の価値は、狙った動きができたかどうかで決まることがわかります。崩れた1回は、目的を果たしていない1回なのです。

限界ギリギリ10回は「崩れた動き」の練習になる

動作を覚える時期に、疲れて崩れたフォームで回数を稼ぐとどうなるでしょうか。

体は、繰り返した動きをそのまま覚えます。
10回のうち後半5回が膝が内側に入ったスクワットなら、子どもは「膝が内側に入るスクワット」を5回分練習したことになります。

回数を守ることが目的化すると、正しい動作を覚えるどころか、悪いクセを刷り込むことになりかねません。これは、スポーツの動きのクセやケガのリスクにもつながります。

子どものトレーニング回数の決め方

ルール1:原則、少ない回数に設定する ※足りなければセット数を増やす

動作を覚える段階では、1セットの回数を少なくして、セット数を増やすやり方もおすすめです。

  • 例:10回×2セット → 5回×3セット

総回数は同じでも、1セットが短いので集中力が続き、疲労でフォームが崩れる前に区切ることができます。子どもは集中が長く続かないので、この方法は特に相性がいいです。

ルール2:回数をこなすことだけでなく「きれいにできた回数」で数える

子どもの場合は、回数を先に決めるのではなく、フォームが崩れたところでそのセットを終わりにします。

  • 10回の予定でも、7回目で崩れたら7回で終了
  • 「7回きれいにできたね」と、きれいにできた回数をほめる
  • 次回は8回、9回ときれいな回数を伸ばしていく

これだけで、トレーニングの中身が「回数をこなす練習」から「正しい動きを積み重ねる練習」に変わります。
コーチ・指導者の方に教わるときは、各種目の目的とチェックするポイントを確認するようにしましょう。

ルール3:限界まで追い込まない

子どもの自重トレーニングで、限界まで追い込む必要はありません。
「もう少しできそう」くらいで終えるのが基本です。追い込むほど最後の数回はフォームが崩れやすくなり、動作を覚えるという目的から離れてしまいます。

ルール4:次に進む基準は「回数」ではなく「質」

回数を増やす、負荷を上げる、難しい種目に進む。
そのタイミングは、同じ回数を正しいフォームで安定してできるようになったときです。

「10回できたから次」ではなく、「10回が毎回きれいにできるようになったから次」。この順番を守ることが、長い目で見ていちばん伸びる近道です。

まとめ

  • 「10回×3セット」はリハビリ研究に由来する目安のひとつで、万能な回数ではない
  • 反復回数は目的によって変わる。大人は「回数」より「余力(あと何回できるか)」の方が重要。
  • 子どものトレーニングの主目的は、動作を正しくできること・動作そのものを覚えることであって、筋力の強化や筋肥大ではない
  • 崩れたフォームで回数を稼ぐと、崩れた動きを覚えてしまう
  • 子どもは「きれいにできた回数」で数え、崩れたらそのセットは終わり
  • 次に進む基準は回数ではなく、正しい動作が安定してできているかどうか